「歯磨きをしようとすると逃げる」「口を触らせてくれない」という相談は、歯科ケアの中で一番多いです。歯ブラシを嫌がる子のほとんどは、いきなり口に異物を入れられた経験から学習しています。最初の一週間は、歯ブラシを使いません。
第1週:口周りを触ることに慣れさせる ¶
まず、口の周りを触ることを「嫌なことではない」と覚えてもらいます。食後のリラックスした時間に、口の周りを軽く撫でます。嫌がらなければ、唇をめくって歯茎に触れます。嫌がったらすぐやめる。無理に続けない。1回30秒でいいです。おやつと組み合わせると、「口を触られる=いいことがある」という連想が生まれます。
第2週:指にジェルをつけて歯茎に触れる ¶
歯磨きジェルを指先につけて、歯茎をなぞります。チキン風味など、その子が好む味のジェルを選ぶと受け入れやすいです。この段階では、歯の表面を磨くことより、「口の中に何かが入ること」に慣れることが目的です。奥歯まで届かなくても構いません。前歯の歯茎に触れるだけで十分です。
第3週:歯ブラシを導入する ¶
指での接触に慣れたら、歯ブラシを見せることから始めます。においを嗅がせ、舐めさせます。次に、ブラシを歯茎に当てるだけ。動かすのはその次のステップです。犬用・猫用の小さなヘッドのブラシを使ってください。人間用は毛が硬すぎることがあります。毎日続けることが大事で、週1回の念入りな磨きより、毎日30秒の方が歯周病予防には効果的です。
どうしても無理な場合 ¶
歯磨きジェルを歯茎に塗るだけでも、何もしないよりは効果があります。デンタルガムや歯磨きシートも補助として使えます。ただし、これらは歯ブラシの代替にはなりません。歯周ポケットの中まで届かないからです。年1回の麻酔下スケーリングと、日常の歯磨きを組み合わせるのが現実的な選択肢です。「うちの子には無理」と諦める前に、一度相談してください。
歯磨きの慣らし方は、診察のついでに実演することもできます。「どうやって持てばいいかわからない」という方は、次回の受診時に声をかけてください。